1970
詩集『聖なる淫者の季節』より

第一章

すでに
わたしは 入っていた
聖なる淫者の季節 4月に
没入する神の 失落に満ちた顔を
わたしは 太平洋の西でみた
彼は わたしの前にあり
声を とどかない一本の
電話線にねかせて
永遠へ 去っていこうとする
永遠とは 消滅であった

わたしは
さんたんたる若い愛を カモシカのまたの間にみた
また つくしの生えてくる地面の
熱い土の怒りの 吐息の中にみた
プラグネットしている土
精神の井戸をホル男がいる
イレズミ師である
男は何年も何ヶ月もかかって
ひとつの精神の淵をホリ サしていった

男は自分のイレズミの宿命の香り
運命のイビツにして残忍な爽快さを知らない
しかし 男はイレズミ師で
しまいに男は 男という名の薔薇の
イレズミになり
その女の魂ふかく もぐりこみ
永遠に眠り もうおきない 画になる
そこで
女の魂が ゆれるたび
イレズミの薔薇は 黒く 男の声で笑い
涙の血を ふるいおとすのだ

みみずが ないているよ
あるいは ロビンがないている

女の外側で
自然と季節の声がかかっているが
女はイレズミがあり
亡びることができない 暗い部屋
女は 暗い部屋だ
暗い呆然とした いつまでも
あかつきの こない世界の中で
女は おそらく
と 独りごとをいう
これはある永遠まで
つづくであろう

死ぬことは
おそれることでもなかった
しかし 別れることは

ひとりの男は
あまりに ひとりである
男は ひどく 長く 短かく
5年間 生きた
5年間が 急に透けとおり 溶けていく端に
彼の かつての女
女神が 淫にやけて ちぢれただれている
夕焼け色の週末が 蜘蛛の糸にかかっている
彼女は もはや女神とみえず 女蜘蛛だ
しかし また 女神にもみえる
妙なところで
男は しゃがみ くしゃみし 鼻をかんだ
世界を しわくちゃにし まるめ
顔のそばにもってきて ぬぐった
彼のホホに
しわくちゃの世界はハリツキ
彼は その世界に
地図のように
そっけなきう 立つことができた
その世界への何らの愛撫も許されることはなくて

男は
男とは ほとんど犬である
と 思うことで ほとんど男であった
ほとんど 哀しみであり 絶望であり
全世界である として
いま それが何だ

わたしたちは いま
ボーリングしに いくでしょう
わたしたちは いま
口争いをし ボクシングをみにいくでしょう
わたしたちは いま
ハカバにいく前に
ちょっと人生に よりにいくでしょう
わたしたちは
いくでしょう 非常にいくでしょう
非常に電車やイメージや苦痛や
現実などにのり
愛というヒョータンのゆれる景色をサゲスミ
憎しみ 愛し 恋しながら

1週間がたった
しかし 昨日は
すでに 永遠だった
かえってこない日々は
百日も千日も むこうで 煙になっていた
わたしは 煙がときどき
火となり すすりなくのを聞いた
熱い地獄の涙が
マタの間を ゆっくりと流れ
祖先の精の霊のむこうへ
ハミングしていき
虹となる

昨日 わたしは
古い時と メモリーを 切り倒し
谷底にけおとすと
新しい木を抱いて ねた
木には 記憶も名前もなかった
それは まるで若者
のようであった

淫することこそ愛である と
美酒たちは くちぐちにいった
ならずものが
西部ならぬ東洋の Spring の一端を
ラバーシューズで走っている
全人類の女たちは 一瞬
牝兎に かわり
あの ならずものという人種の
足のガニマタの美しさに感動した
また
ならずものの 眼の 非常識な
純粋の 水晶の信念に
思わず 口をあいて 涙を流した

桜が咲いていて イースターだ
復活ほど地獄である
復活があるから地獄なのだ
なにごとも 死ぬことなどなく
絶えず生まれ 生きながらえ もだえ
さらに 復活までするときては

永遠人は つねに
彼の永遠から 去ることができない
つねに 眠ろうとする彼
人生に眠りにいこうとする彼を
呼び起こす悪魔の愛のシンケン
神の非情のやさしさ

わたしは東洋にいた
アネモネをかかえ
この ちいさな花束を
ある人生の春の 旅人に
渡しにいこうとしていた
また
透きとおったアンブレラを買った
また それよりも 透きとおったレインコートを買った
そして どこまでも
透きとおることの ぜったいな肉体を
その中に もぐらせた
わたしは 女の裸を愛した
アネモネのように 女の体のあらゆる部分に
哀しみと美しさを咲かせる
種植人が すきだ

種植人Sは 咲かせることを知らなかった
しかし 彼は吠えることを知っている
まさに美しい手負いの豹であった
彼は 彼の皮膚のあらゆる黒さの上に
精神の ちりばめた愛のイタさを
ビー玉のように散らした

このSは よく時をソシャクし 恋人につくした
恋人は 彼のくれた時を 乞食のようにガツガツと
たべ なめ さらに
彼の皮膚の上に 皿にのこっている汁も吸いこもうと背をかがめた
彼の恋人は 貪欲に いくども この豹を
裏がえしては 吸い むさぼった

わたしの日常は はじまっていた
夜 男は鳥のバーベキュをもって
わたしの胃袋をみたし
愛の湯ぶねの中で
わたしの不幸を瞬時 眠らせてくれるはずだ
また
暗黒の天使の種子たちをつれて
地獄の方から
しだいに天国の方へと案内してくれるはずだ
非常に 幼いのに誠実であり
律儀である この育ちのよい魂は
わたしをイライラさせる
完璧は あらゆる不幸にまさっている点で
不幸どもに きらわれる
ひとびとは誰も Happy などなりたがらない
いつも Unlucky をまっている
人間は非常に人間であることに
たいくつしている

人間は 狼になりたい
ペンペン草になりたい
ならずものになりたい
ならずものの 気まぐれにふりまわされ
自分を亡ぼしたいのだ
非常に 急激に亡びたいドラマを
男も女も 性交●←ルビに「レグ」●するのだ

みんな 死にいそいでいる
非常に 死にに いきたがっている
だから ほとんど
子供を生みたがり
次に
後悔するのだ
老いたことを哀しみ
じつに性急に老いたがっている
人類は永遠をのぞまない
すべて亡びたがっている
彼らは人生になりたくない
ロマンになりたいのだ
むしろ バラに
虫ケラに
虫ケラのようにフミツブサレルことに

永遠は 苛酷なバラだ
苛酷な刑だ

だから わたしは彼を
永遠へ
毎日 毎日 送りこむのだ
つかのまの
つかのまたちよ
また
若い木 地下鉄たちよ
行動たち 沈黙たち
太い 実直な愛
強靱なペニスたちよ
誇りたちよ 若者の眼たち
その淵に ハネカエル涙の滝
怒りと愛の バイタルな魚たちよ
そしてサムエル サムシングたち
無名のひとりであるおまえ
わたしは おまえを永遠にすまい
おまえは現在である
亡びる愛である 嫉妬深い 執念深い
しばらくの背中である
復讐であり 闘争であり Simpleな一途さである

Something else
Human である おまえ

おまえの魂と同じくらい
おまえのペニスを愛するだろう
おまえの筋肉のバネと同じくらい
おまえの心臓の感じやすい鼓動を愛するだろう
おまえのおさない不幸と同じくらい おまえのあどけない Happiness を
おまえの獰猛な裏切と同じくらい
おまえのやさしい信仰を
おまえの残忍な君主と同じくらい
おまえの奴隷のつつましさを
おまえのトランペットの快音と同じくらい
おまえのボクシングの強力なジャブを
おまえの悪魔の魅惑と同じくらい
おまえの天使のそっけなさを
愛するであろう

男とねていると わたしはすぐ
10年くらい ねむる
男は ねむりである
セックスは薬である 麻薬である
愛は憎しみであり 骨である
嫉妬の先に ブラサガッタ恋が
宇宙のオモリである
ようやく わたしを
めざめへと 猛進させる

桜がハラハラと散ったあとで
トツゼンみぞれなどもふり
彼の4月は荒れた
彼は ほとんど
冬の方に ひきかえそうとしたり
またトツゼン 季節にのり
明日に いこうとした

4月は ならずもので
残酷で 甘く センチメンタルである
ほとんど 責任のない愛であり
刹那的なため
ほとんど 永遠になったりする
その間に
遠く 旅たったものが ひとりふたりいた
オクラホマのジュンから
<もうホワイトをさがさない>
と 手紙がきた

訣別は いつもセンチメンタルである
想い出は かならずといっていいくらい
ユゲをたてているのだ
<甘い>
Oh, ロマンチックなジュンよ
犬は とてもかわいい
正直に みぶるいする
哀しみがある

わたしは 日々の間を往復した
わたしは build(建設)するものと 崩壊するものとの間を
日々に 何度も往復した
わたしは しだいに わたしが
なにかを build する 建築するのだということがわかる
すると 神を呪い
悪魔になったカニの子たちを愛した
ほとんどカニでいるわけには いかない
這っていることで 何もはじまらない
彼は 空手の美しいフォルムを
すばやく ならった
それは build への美しい line であるか
究極の崩壊へと志向するのは build で あるか

みぞれがおさまった
4月も すこしは晴れた
本心ではないにしても
そとからみると 4月は
いつもの上機嫌を
回復しはじめたかにみえる
その頃
わたしはスミレとチョコレートをもって
銀のコスチュームをつけ
白い蛇をつくる女へ逢いにいった

男とは通りすぎていく影である
影が真実であるか フィクションであるか
だが
生きてすぎていく
男たちは 影である

やがて 通りすぎようとする若い影が
いま わたしの線路の上に さしかかる
ほとんど 虹の雷にうたれ

恋の頭痛がはじまる 初雪の季節が
彼の 脳髄の中で
ゆっくりと 降りはじまる

非常にいそぐ人生
許すべきでない それらいそぐ足たち
非常に いなくなろうとする彼
彼は はからずも いなくなる時点へ
虹のように

ときたちの海原の上で 謀られたのは誰か
彼の純白のとき
漆黒の 純粋の 毛皮のよい性格の
うち側に 月がのぼる
荒廃として 死は
すべての死者よりも近くにすわり
沈黙を吸う

死とは甘美でない
そして
詩は甘美だ
おまえの生存は甘美でない
そして
おまえの存在は Soul の雨降る景色は
甘美である
わたしは甘美でない
そして
わたしたちは甘美である
なぜなら
わたしたちは決意だからだ
決意のロマネスク
意志という名の人間だ
ところで
それをはこぶ
みえない アメリカの夢は
甘美でない
アメリカの夢は
生者と死者との間を
同じ番号で ととのえる

wonderful
これは すばらしいと同時に
おどろくべきことだ
わたしは おまえを
ここに懐胎する
ここに
おまえを 栽尾する
ここに
おまえを呪い つちかい 祈る
愛撫の密議を行う
電車にのって 今晩
おまえにあいにいく 愛しあいにいく
おまえは名前がない
名前があるとして
ここで何でありえよう
無名という 全存在の海に
はばたく lonely おまえ自身
おまえの他の何者でもない

ひとつの決意は つねに残酷である

親愛なるXへ
非常に長い手紙をわたしはかきはじめる
それは わたしにもみえない
もちろん おまえにも あなたにもみえない
わたしたちは 非常に長い手紙をかきだす
非常に長い決意の上をあるきだす
非常に長い手紙をかきだす
しかし この長いは 永遠ではない
人間の 生きている限りの
決意の 濡れる限りの
長さである
人間の長さである
永遠の長さではない
永遠ではない
長い long

むかって わたしは
わたしたちは
非常に 長い
手紙をかきだす
今日